ローザンヌの夜ローザンヌの夜1967年始めてスイスを訪れた。 2日ばかり暇が出来たのでユングフラウを経て夜遅く ローザンヌの小さなホテルに投宿した。 食後バーでビールを飲んでいると初老の紳士とはいえそうもない 人物が私に日本人だろうと話しかけてきた。 彼「汝フランス語を話すか」「Non」。 私「汝英語を話すか」「No」。 彼「汝ドイツ語を話すか」「これ位(人差し指の3分の1くらい指す)」。 私「汝ドイツ語を話すか」「これ位(人差し指の3分の1位)」。 以下はドイツ語によるほとんど手話に近い会話。 「俺は若い頃船乗りで何度か神戸・横浜に行った。 日本のガールは最高だ。一杯言い思い出があるよ。等など 「もう遅いので俺は帰るよ。せいぜいスイスを楽しめよ」 (彼は扉を開いて暗い町へ消えた) (彼が去るや否やバーテンダーがジョッキのビールを私に持ってきた) 「俺頼んでないけど」「いや、いままで君と話していた男のおごりだよ、 まあ飲んでやってよ」 当時私は30過ぎで外国で経験することが全て物珍しかった頃の 思い出である。 |